多様なニーズを支える
「新しいツルヤ」へ
ツルヤでは現在、従業員の皆様と共に「3K活動」を進めています。これは「お客様の家計(K)と身体(からだ:K)にやさしく、心(K)にうれしい商品・料理・サービスを提供する」という取り組みです。
コロナ禍を経て、世界的な気候変動、各地での紛争勃発など社会が大きく動く中で、お客様の暮らし方や価値観も多様に変化しているように思います。それに対応するために、スーパーマーケットにできることは何か。私たちは「豊かな食生活を創造する」という企業理念に基づき、創業130年を機に新たに策定した「ツルヤTRY130ビジョン」の中で、具体的な行動目標を定めました。県外への出店、セミセルフレジ導入、デジタルコンテンツを活用した人材育成なども一例です。
新たなビジョンに向けて3K活動を進め、お客様それぞれの価値観に寄り添った「新しいツルヤ」へ。商品づくり、店舗づくり、事業運営のあらゆる分野で今、社員・パートナーが一丸となって動き始めています。
人と商品が、
自然に育つ店づくり
2020年に初めて県外へ出店したのを機に、店舗面積は徐々に拡大しています。現在の標準店舗の売場面積はこれまでの1.5倍となる1000坪へ。建築コストは上がりますが、これは「人と商品が育つ店づくり」を進めるために、必要なことだと考えています。
例えば2024年秋オープンの「かんらショッピングパーク」では、冷凍食品売場が約1.5倍に広がります。これだけ大きいお店ですと、それぞれの担当者が工夫して店舗運営に取り組んでいかないと、売場を埋めることができません。
どんな商品が新しく必要になるか、売場や棚割りはどうすれば良いか。新しい商品を入れたり、これまでにないレシピを提案したり、一人ひとりが考え、機能を充実させることで、お客様の多様なニーズやライフスタイルにも応えられるようになるはずです。
体にピッタリの服では、成長すればすぐに動きにくくになってしまいます。社長として私がするべきは、皆が余裕をもって育つことができる、少し大きめの服を用意することでしょう。実験販売も含め、様々な商品を用意しながらお客様の動向を把握し、人も商品も自然に育つ店づくり・企業づくりを、これからも目指していきたいですね。
高鮮度・高品質で
お届けするために
ツルヤが創業以来こだわっているのは商品、特に生鮮食品の鮮度と品質です。最高レベルの鮮度、おいしさをお客様へ届けるためには、産地とのネットワークや物流システムの整備と共に、店内設備も拡充する必要があります。
冷蔵庫や専用室の準備、さらには確かな調理技術を持ったスペシャリストの育成も重要です。目の前のお客様に合わせて、商品を加工したり、新しい商品を追加したり、標準店の規模拡大には、「新鮮・さわやか・ハーモニー」というコーポレートキャッチを実現する、そんな意味合いも含んでいます。
同時に、地域の生産者様やメーカー様と協働で、PB(プライベート商品)にも力を入れてきました。安心・安全なおいしさを第一線で考える作り手さんとの商品開発は、県内外の多くのお客様からも評価いただいています。
ただPB商品だけに偏ると、独りよがりな売場になってしまいがちです。当社ではPB商品、ナショナルブランド(NB)商品、ローカル商品のバランスを「2:6:2」で実践。多くのお客様の暮らしに欠かせない大手メーカーさんのNB商品を中心に、安心して利用いただける商品構成を、今後も大切にしていきます。ちなみにローカル商品とは、例えば地域のお豆腐屋さんや和菓子屋さんから届けていただく商品のこと。量はそこまで多くないですが、その土地ならではの「食」をお客様に感じていただける大切な存在です。
個性を大切にして、
1つの頂へ
「商品経営」「堅実経営」と併せて、地域・お客様・お取引先・従業員が共に育つという「共育経営」を、経営の基礎として定めています。
若い新入社員の方たちも、私たちと共に成長いただく大切な仲間です。今回の採用も、新しい視点を持つ方の新鮮な発想や力を借りながら、一緒に前に進んでいくためのもの。ツルヤの理念や「3K活動」に共感される方、「ツルヤの商品が好き」「ツルヤのお店が好き」という方と、共に前に進んでいけたらうれしく思います。
入社後は、集合研修やフォロー研修と共に、タブレットで学べる「eトレ(動画マニュアル)」を用意。部門ごとの仕事の進め方から接客ノウハウ、衛生管理方法、社規・ルールまで、一人ひとりのペースで繰り返し見ることが可能です。
長野地区の店舗には新たにサテライトオフィスを設置して、本部とのやり取りを効率化しています。今後はいっそうインターネット環境を整え、より多くの拠点で、教育や社内コミュニケーションの距離的・時間的負担を減らしていく方針です。
お伝えしたいのは、「どの山に登るか」という目標がはっきりしていれば、いつ、どうやって登るかの手順や行動は問わないということ。もちろん道を外れて別の頂に行きそうな時は、上司や先輩が指導しますが、そこさえ間違っていなければ、それぞれの個性や経験によっていろいろな道をたどっていただける会社です。
目の前のお客さまが何を望んでいらっしゃるのか、そこに対して自分が何をできるのか。年齢や社歴を問わず、自ら考えて仕事を楽しめる人材を増やすことが、千差万別のニーズに応える第一歩になるでしょう。
「新しいツルヤ」が
目指すこと
県外に出店してから、拠点拡大の考えを聞かれることが増えましたが、私たちが目指すのはこれまでと変わらず1店1店を大切にすることです。
セミセルフレジ導入時に完全なセルフスタイルにしなかったのは、スキャニングによるお客様の負担感を減らすためでした。何十点もの品物をお客様自身に対応いただくより、むしろサービス部門のプロフェッショナルを育成し、スムーズかつ美しいレジ業務を進める方が、ツルヤの目指す姿に近いと考えたのです。
近年の物価高騰を受けて、2023年はあえて増収減益を目標に据えました。「お客様が困っているのだから、企業としてできることをしたい」。そこに私たちの社会的使命があるからこそ、経費や諸費用のコントロールを徹底し、やるべきことを続けてきた形です。
単に店舗数や売上を上げるのではなく、多くの人に「ツルヤに来て良かった」「また来たい」と感じていただけるお店にすること。「TRY130ビジョン」の中に「1店舗あたり年間100万人」という来店客数目標を掲げているのは、商品力からサービス、店内の雰囲気、衛生管理の面もすべて併せて、多くの方にツルヤのファンになっていただきたいという思いからです。
130年を超える歴史の中で、これまでやってきたことを改めて振り返り、本当に必要なもの・コトを突き詰める──その中で、いっそうお客様やお取引様に支持される「新しいツルヤ」を、皆さんと一緒に創っていけたらと考えています。
株式会社ツルヤ
代表取締役社長 掛川 健三
1948年11月生まれ。立教大学卒業後、1972年ツルヤ入社。
2007年10月に代表取締役社長就任。